モーツァルト 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」K.527より序曲 作曲・初演 1787年
- 愛らしきご婦人よ うちの主人が愛でた美女のカタログとはこれのことです。
あっしが作りましたカタログでしてご覧下さい 一緒に読んでみるとしましょう
イタリアでは640人 ドイツでは231人 フランスでは100人 トルコで91人
おまけにここスペインではもうすでに1003人ですよ - 『恋のカタログの歌』より
この歌よりドン・ジョヴァンニがどんな人物なのかお分かりいただけるでしょう。このオペラの題材はスペインを舞台に広く言い伝えられたプレイボーイ「ドン・ファン伝説」です。
この作品は、モーツァルトが31歳の時、プラハで歌劇『フィガロの結婚』が大ヒットしたことにより、プラハの劇場より翌シーズンの作品を依頼され作曲されました。この序曲に関しては、天才モーツァルトと言われた彼でさえ、納期ギリギリの前日の夜から書き始め、徹夜で書いたと言われています。でも、一晩で書けてしまうところは、さすが天才。若く35歳で亡くなってしまった彼にしてみると、作曲家人生として最盛期であり晩年の作品になります。
「ドン・ファン伝説」を題材にした作品は数多くあり、女性の私からすると、なぜこんなどうしょうもない男の話が魅力的なのか疑問ではありますが、この序曲は、心奪われます。ドン・ファンの謎めいた魅力と物語に引き込まれてしまうような衝撃的な序奏からスタートします。それもそのはず、オペラの幕開けにして、”地獄の扉”が開くというクライマックスのシーンから始まるのです。ある晩、騎士長の娘に手を出し、それに怒り剣を抜いた父(騎士長)を殺してしまったドン・ジョヴァンニ、その騎士長の亡霊に「悔い改めよ、生き方をかえるのだ」と迫られます。しかし、彼はこれを断り、「悔いはせぬ、心は決まっているのだ」と潔く亡霊の示す、開かれた地獄の扉へ入って行き、苦痛と共に地獄へと引きずり込まれていく。その劇的な場面から演奏されるのです。その後、場面が変わり、まるでこんな自分のラストを想像することもない陽気なドン・ジョヴァンニを表しているかのような軽快な曲調に変わりオペラ本編へと続く序曲が演奏されます。
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