2018年9月14日金曜日

曲目解説(2)

モーツァルト ピアノ協奏曲第23 番イ長調K.488
 作曲年・初演1786 年

 次に演奏しますのは、先ほどのオペラが書かれた前年のこと。モーツァルトは23~25番の3曲のピアノ協奏曲を作曲しています。23番は、同年に開かれた3 回のモーツァルトの予約音楽会のために書かれました。
 予約音楽会とは、今のような事前にチケットを買ってもらい開かれる一般的なコンサートのスタイルです。当時としては、新しい形であったようです。音楽家は宮廷音楽長になるなど“公職” に就いて活動することが、一般的でした。彼はというと、小さい頃から父親に連れられ“神童” として各地を回り、まるで見世物のように天才ぶりを披露していました。ところが、青年になると一変、ウィーンの女帝マリア・テレジアには、「乞食のよう
な容貌で物乞いする一家」と評され、また彼自身のプライドの高さも災いして、なかなか職に就くことができませんでした。そこで、ウィーンに定住し、フリーの音楽家という新しいスタイルを選び、活動・新曲を披露する場として、この予約演奏会というものを開くのでした。とはいっても、モーツァルトは人気作曲家でしたから、1回の演奏会での報酬は約700万円程だったといわれております。そんな新しい音楽活動を順風満帆に行っていたと思われる時期の作品です。
 この作品は、他のピアノ協奏曲とは、作曲方法が違ったといわれています。いつもはピアノパートをスケッチの段階で、オーケストラ全体と共に入念に仕上げていましたが、この作品において、ピアノパートは最初からカデンツァなど細部に至るまで完全な形でまずは作曲されたそうです。また、他の協奏曲においては見られない、通常であると即興によって演奏されるカデンツァもこの作品では第1楽章に完全に記され、第2・3楽章にはカデンツァは置かれておらず、また、どこにも入る余地が示されていないことから、いつもは非常に好んでいる即興演奏を与えなかったことになります。それはこの作品の音楽的な完成度にいつも以上にこだわりがあったからではないかといわれています。そんなモーツァルトのこだわりのピアノ協奏曲をお楽しみください。
 

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